パルマ国立美術館の「劇場」空間 |
ごっつい扉の入口から中に入ると、そこはいきなり木造の劇場が・・・。
数多く存在するイタリアの国立美術館の中でも、それはおそらく唯一無二の例に違いない。
公国パルマを治めるファルネーゼ家の、おそらく最初は来客用施設として使われていた建物の中に、文字通り「劇場空間」が作られたのは、1617-18年のこと。当時のパルマ公ラヌッチョ・ファルネーゼ1世が、フェッラーラの建築家ジョヴァンバッティスタ・らルジェンタに設計を依頼したもので、それまでは祝祭用の武具などを置く倉庫であった。
トスカーナ大公コジモ・メディチ2世のパルマ訪問にあたり、その歓待のために急遽作らせたが、コジモは健康の問題により訪問が実現せず。劇場が初めて利用されるのは、1628年、コジモの娘マルゲリータ・デ・メディチと、ラヌッチョの息子オドアルド・ファルネーゼの結婚の儀を待たねばならない。祝祭のために演じられたのは、クラウディオ・アキッリーニ脚本、クラウディオ・モンテヴェルディ作曲の寓意的神話「メルクリウスとマルス」。
ところがこの劇場が利用されたのは、ファルネーゼ時代のわずか9回のみ。主にファルネーゼ公の結婚を祝う際で、その後、18世紀に入り、当主がボルボン家に変わると、その時代には一度も日の目を見ることがなかった。19世紀に入り、ヨーロッパのインテリらの訪問を受けるようになった。
一般に再び公開されたのは1913年、ジュゼッペ・ヴェルディの100周年記念の際。1944年5月には連合軍の爆撃により崩壊した。1956年から65年にかけて、オリジナルの木材やわずかに残った装飾を生かし再建。86年より、パルマ国立美術館のエントランスとなっている。
ヴィチェンツァのテアトロ・オリンピコもそうなのだが、ローマ風の半円形劇場が室内に、木造でできていることに驚く。
そして、劇場といえば、通常であれば観客席側から舞台を見ることになるわけだが、ここでは順路上、皆が舞台に上がってこの空間を眺めることになる。美術館の(最後でなく)最初であるにも関わらず、多くの人が舞台に用意された椅子に座って、それはそれでまた何かの出し物かのように、しばらくその場を楽しんでいるのが印象的。
劇場の説明については、公式サイトを参照した。
Galleria Nazionale Parma
http://www.parmabeniartistici.beniculturali.it/
19 nov 2014