夏の盛りに〜パエストゥムのギリシャ神殿 |
まだ暑い夏の盛りに、パエストゥムへ行った。
ナポリからローカル電車に乗って1時間半くらい。時刻表では1時間くらいになっていたが、ぐっと遅れてそのくらいになった。パエストゥム、という駅だが、そこからは全く何も見えず、少し歩いたところにそれらしき門が、そして緑の木陰をずっと歩いていくと、目の前に横長の「考古学こ公園」が突如、開ける。
左右見渡すと、ギリシャ神殿が3つ。その間も、よく見ると遺跡で埋まっている。
柵に沿って右の方に歩いていくと入り口があるが、チケットはその手前にある博物館で買っておく必要がある。
公園に入って、すぐ右手に見えているのがアテネ神殿。
3つの神殿の中で唯一、手工業と戦争の守護神であるアテネに捧げられたものであることが明らかになっている。紀元前500年ごろ、すでに女神をまつる建物があったところにこの神殿が建てられた。内陣部分は外の円柱より一段高くなっており、イオニア式円柱で囲まれた前室(プロナウス)により導かれている。
近づいてみると、その迫力に圧倒される。ところが、こうして遠くから全体の写真を撮ると、まるでマッチ棒で作ったお城のように、華奢にさえ見える。これは、その時にはわからなかったのだが、あとで他の2つと比べると、とくにその細さが顕著なのがわかる。
3つのうち中央にあるのがが「ネプチューン神殿」。紀元前5世紀中盤に作られたもので、このパエストゥムで最大、かつ最も保存状態がよい神殿であるだけでなく、同時代に作られたギリシャのオリンポスで最も大きなゼウス神殿よりも状態がいいらしい。確かに、写真が、まるで絵に描いたようでかえって笑ってしまうくらい。
・・・ともかく大きい。そして、神々しい。
かつてのギリシャ人たちと宗教をともにするわけではない、この神殿の意味するところの1%だってわかっていないだろう。それでも、そこに何か神聖なものが宿っている、それは感じるような気がする。
嬉しいのはそして、こうして実際に中に入って、実際に歩いてみることができること。
セルフィーにスケッチ、あるいは巨石に腰掛けてウットリ・・・と、決して多すぎない観光客たちの楽しみ方も、のんびり、それぞれだ。
折しも、イタリア中部で大きな地震があり、全壊した多くの建物をニュースで目にしていたばかり。よくもまあ、こんな建造物が地震でも倒れずに残っているものだと感心したが、あとで確認したら、この神殿では、巨石同士を、セメントなどでつなぐことなく、「ダボ」と呼ばれるつまり中ネジでのみ止めて積み上げている。そのために地震をはじめとする天災に強いのだそう。
内陣の壁は失われているがこれは、数世紀にわたり近隣の住民たちが住居などの建築のために石材を再利用してしまったため。
この町の名パエストゥムは、旧名をポセイドニアというが、それはポセイドンの地という意味。
ギリシャ名ポセイドンは、ラテン語でネプチューン。この町の3つのうち最も大きいことから、町の名の由来であるネプチューンに捧げられた神殿であろうと考えられているが、最近の研究ではほかの説もある。
最後が、通称「バジリカ」、またはヘラ神殿。こちらは3つの神殿のうち最古で、紀元前560年ごろのもの。ギリシャ神殿というと、こうした石の大きな建物が当たり前のような気がするが、まさに石を使って巨大な神殿を建て始めた、最も初期のころにあたり、現存する同時期の建物の中でこれまた最も保存状態がいいらしい。
神殿の作りとしては非常にシンプルで、内陣などがなく、中央に縦に円柱が並んでいる。これは、まだ木造で神殿を作っていたときの名残だという。
便宜上「バジリカ」と呼ばれているが、実際にはどういう用途で使われていたものか明らかになっていない。ヘラに捧げられた神殿という説が有力。
こちらもまた、中に入って、自分の足で歩いてみることができる。
(遺跡の解説は公式サイトを参照、翻訳しました)
パエストゥム考古学公園
Parco Archeologico Paestum
http://www.museopaestum.beniculturali.it
30 settembre 2016
ナポリ出身でなければ、イタリア人でさえ、今でも何となく躊躇するらしいナポリから行くとなるとハードルが高いですが、行ってみたいです。
サレルノには数年前にポンペイから電車で行きました。(いかにもローカル線という感じのボロい電車でしたが激安だったのを覚えています。)この遺跡のことは全く知らず、サレルノに行ったのは、エオリア諸島へのワンウェイ・セイリングのためでした。