イタリア映画祭2017、開幕 |
イタリア好き、映画好きにとって、毎年ゴールデンウィークの定番となっているイタリア映画祭が昨日、29日に開幕した。
といっても、私は実際にここで足を運んで映画を見るのは初めて。初日、「君が望むものはすべて(Tutto quello che vuoi)」、「どうってことないさ(Che vuoi che sia)」を観た。
ローマの下町、チンピラ・・・まではいかないけれど、学校は中退、家業は手伝う気がせず、一攫千金を夢見て毎日仲間とぶらぶらする青年たち。ケータイやタバコ(プラスα)、タトゥーだって親が出しているのだからどうしようもない。ああ、よくあるイタリア。
業を煮やした父親が息子アレッサンドロを、半強制的にアルバイトに向かわせる。85歳、一人暮しで(元)詩人のジョルジョの散歩の付き添い。はじめはもちろんイヤイヤ。おまけにジョルジョは軽いアルツハイマーを患っていて、アレッサンドロの名前を覚えられない。
だが少しずつ、アレッサンドロはジョルジョに心を開いていく。
ありきたりの人情もの?そうかもしれない。だが、悪党友達も巻き込んで少しずつ皆変わっていく様子は心地よい。
上映後は、監督のフランチェスコ・ブルーニ(Francesco Bruni)と、妻で出演者の一人ラファエッラ・レッボローニ(Raffaella Lebboroni)が登壇。この物語は、実際に自分たちの親がアルツハイマーを患って苦労した経験から着想を得たと語った。なお、彼らの息子も、悪党の一人として映画初出演を果たした。
アレッサンドロ役で好演を見せたアンドレア・カルペンツァーノ(ANdrea Carpenzano)は新人。これに先立つバーリ国際映画祭では、この作品で最優秀新人賞を受賞したらしい。彼らの「その後」が楽しみでもある。
こちらはミラノ、コンピューター技師クラウディオと高校の非常勤講師アンナのカップルはどちらも大卒。真面目に、誠実に仕事をしていても日常生活を送るのに精一杯で、子供が欲しいのに持てずにいる。クラウディオが新しいプロジェクトを立ち上げようと、クラウド・ファウンディングで出資を募ってみてもロクに集まらない。ヤケになって、酔っ払った勢いで「目標金額に達したら、二人のセックスを公開します!」と動画をアップしてしまう。
・・・それからが大変。動画はシェア、拡散され、出資者からあれよあれよと増え・・・一躍「ときの人」に。戸惑い、怒り、怯え、迷い・・・ののちの彼らの決断は?
監督・主演のエドアルド・レオ(Edoardo Edo)は、インターネットの普及し(過ぎ)た現代において人々は、一番近い友人や家族とよりも、あかの他人とのほうが自らの恥部を共有することに抵抗がない、という。また、自分と同じ世代のいい大人が、自らの顔写真を犬やパンダに加工してそれを喜んで公開するのは理解できない、と。そんな身近な疑問を、コメディに仕立てたのがこの作品。
なお、第4作めとなる本作品まで、監督を務める作品では必ず主演も務めてきたが、監督と俳優の仕事は全く別。俳優として他の監督の作品に出演するときは、自らの役だけに集中するが、自分が監督を務めている作品では、自らが演じている間にも、次のキューではあの場面をああして、こうして、と考えているという。さらに、日常生活では、忘れ物も遅刻も常習犯なのに、監督作品では自分のセリフはもちろん、それ以外もすべて覚えているのだそう。映画を作ろ、ということに自分のすべてが注ぎ込まれているようだ、と自己分析を披露した。
ローマとミラノと、どちらもありがちな、現代のフツーの若者たちを描いた作品。将来という言葉に希望が持てない生活、身の回りの「ささいな」できごとの積み重ね。スケールの大きな作品では決してない、雄大な自然の風景に圧倒されるでもない。
後世に語り継がれる名作、ではないかもしれない、それでもこういう映画が私は好き。
また、昨年のヴェネツィア映画祭でやはり現代の若者の「フツー」を描いていて興味深かった「ピューマ(Piuma)」、「かけがえのない数日(Questi giorni)」も期間中に上映される予定。
映画祭は、5月6日まで。チケットは前売り、当日券とも、会場では販売されず、あらかじめセブンチケットで購入する必要がある(のが、結構面倒くさい)ので要注意。
『君が望むものはすべて』
[2017年/101分] 原題:Tutto quello che vuoi
監督:フランチェスコ・ブルーニ Francesco Bruni
『どうってことないさ』
[2016年/105分] 原題:Che vuoi che sia
監督:エドアルド・レオ Edoardo Leo
イタリア映画祭2017
東京 2017年4月29日〜5月6日
http://www.asahi.com/italia/2017/
30 apr 2017
「いつだって〜・・・」は特に評判がよかったようですね。私は時間が合わず逃してしまい残念でした。
このあと2本観たのですが、前2本には叶わず・・・ブログも書きそびれてしまいました。