いまさら?・・・いやいや、まだまだ「レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密」 |
イタリア史上、レオナルド・ダ・ヴィンチほど、研究され、語り、書かれてきた人もおそらくいないのではないか。世界を見渡しても、知らない人はいないだろうというこの芸術家であり科学者である人物について、書かれすぎているだけあって、その生涯を考察するのは案外容易ではないと思う。
だから、タイトルには「秘密」とあるけれど、読み手によっては、最初はとくに目新しく感じるものではないかもしれない。それでも、美術史家である著者が、レオナルドという人の一生を丁寧に、1つ1つ彼の作品とともに解きほぐしていくのを読み進めるうちに、いつの間にかその人となりが具体的に、生身の人間として本の中から立ち上がってくる。
それは決して孤高の天才、と一言で言い表せるものではない。いや、誰だって、どんな人の人生だって一言二言で言い表すことはできないのだけれど。不運や不幸は確かにあった。だが、だからこそそれを乗り越えるために、悩み、苦しみ、と同時にときにずる賢く逃げ、ときには積極的に防御し、やがて自分の方法を確立する。芸術家でも科学者でもある前にまず、一人の人間レオナルドがそこに現れる。
次に彼の作品を目にするときには、きっと少し見方が変わっているように思う。
「レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密 天才の挫折と輝き」
コスタンティーノ・ドラッツィオ著
上野 真弓 訳
Leonardo Segreto
Costantino D’Orazio
7 nov 2017