「熊谷守一 生きるよろこび」展」@東京国立近代美術館 |
夭逝の芸術家というのもいる。だが、決して平坦ではない人生、苦労と困難に幾度となく立ち向かい、経験と試行錯誤を重ね、長寿を全うしたくさんの作品を残す芸術家もまた、存在する。
美術学校で学び、写実的な肖像から始まり、闇の中の光を追求し、戦争や貧困、息子や娘の死という悲劇に向き合い、その中で自らのかたちを模索し続ける。「これぞ熊谷守一」というスタイルにたどりつくまでの作品は、それぞれ同じ画家の作品とは思えないほど異なっている。1880年生まれ、1977年にこの世を去った熊谷守一は、そういえばちょうどあのピカソ(1881-1973)と世代をともにしていた。
ポスターやチラシになっている「猫」(1965年、愛知県美術館)は、印刷物やパソコンの画面で見ると、シンプルで平面的なためにまるで木版のように見える。ところが実物はかなり厚めに絵具を重ねた油彩。彼が自分のために発見し、確立した赤い輪郭が、きりりと文字通り作品を形作っている。
日本で洋画を学んだ熊谷だが、日本の版画や工芸に大きく影響を受けたゴッホやマチス、印象派やフォービズムの画家の作品にヒントを得、色も形もまるで日本画のような、いやもっと言うと色紙をちぎって重ねた貼り絵ような、新しい油彩画を生み出したのは面白い。いや、構図はともかく、色はやはり西洋風、だろうか。「猫」のシリーズはもちろん、さまざまな花や小動物たちの姿が、みなとてもユーモラスで愛らしい。前半の、苦悩に満ちた作品から順に見ていくと、スコーンと抜けたような違いが気持ちのいいくらい。ほのぼのとあたたかく、見る者をほっこりさせてくれる。
スケッチなども含め200点以上と、かなり見ごたえがあるのでゆっくり時間をとって行くのがおすすめ。
没後40年 熊谷守一 生きるよろこび
東京国立近代美術館
2017年12月1日~2018年3月21日
http://kumagai2017.exhn.jp/
10 gen 2018
僕はこの展覧会の前に熊谷守一のことを全く知らず、で、彼のような画家が20世紀の日本にいたことに感慨を深くしました。久しぶりに、絵画の奥深さをたんのしました。
日本の美術館や展覧会はは年末早めに閉まるところが多いせいか、年始は混みますよねー。
私もよく知らなかったのですが、いい作品たちでしたね。ああ、これ、欲しい!みたいのがいっぱいありました。