「巨匠が愛した女優たち」展~ゴダールの「気狂いピエロ」 |
「巨匠が愛した女優たち」展開催中の鎌倉市川喜多映画記念館で、「気狂いピエロ」を観た。
1965年、フランスの巨匠ゴダール監督の作品のデジタル・リマスター版、日本語版は翻訳も新しくなったそうで、確かに、読みやすく違和感がない。
巨匠が惚れ込んだアンナ・カリーナ、彼らは一度は結婚し、だが、この作品を撮影したときにはすでに離婚していたという。そうとは思えないほど、この映画は展覧会テーマにまさにぴったり、美しくもかわいらしいアンナ・カリーナの魅力にあふれたすてきな作品で、だからこそ後世に伝えられるべく、こうしてデジタル・リマスターが製作されたのだろう。
オリジナルを観たことがないので、リマスター版でどのくらい違っているのかわからないのだが、マリアンヌ役のアンナ・カリーナと、この作品を引き立てているのは、ピエロと呼ばれるさえないフェルディナン役のベルモンドとの絶妙なかけひきはもちろんだが、最初から最後までがしっと心を掴まれて離さなかったのはその色。まずは赤、これはマリアンヌの服、ピエロの服、車、船、ご丁寧に農作業車まで色を合わせてあって、ううむ、とうなる。そう、物語の鍵となる「血」の色でもある。だが、その赤が、日本にもイタリアにもない、ああ、そうそう、フランスはこういう赤あるよね、という赤。フレンチ・ポップとでもいったらいいのか、明るく透き通った赤で、軽やかだけどもちろんアメリカとも違う。この赤が出せる、似合うフランスに軽い嫉妬を覚える。もう一つは空色。これもまた、日本ともイタリアとも違う、見るだけで、あ、フランス、と思わせる色。ともすれば安っぽく、チャチになってしまう色なのに、ここでの存在感、シック加減には、ただただ脱帽するしかない。
ヴェネツィア映画祭に特別招待、賛否両論の中、新鋭評論家賞という賞を得たというのもうなずける。50年以上前の映画なんて嘘みたい。今、映画祭に出てくる映画よりも、下手すると十分に勢いがあっておもしろい。
「巨匠が愛した女優たち」シリーズは、このあと2月に入って、「ローマの休日」と「おしゃれ泥棒」。そのあと、今度は同特集で日本の映画に移る。
http://www.kamakura-kawakita.org/exhibition/lecture
気狂いピエロ
監督 ジャン・リュック・ゴダール
出演 アンナ・カリーナ、ジャン・ポール・ベルモンド
仏・伊、1965年、105分
http://pierrot.onlyhearts.co.jp
Pierrot le fou
Jean-Luc Godard
Jean-Paul Belmondo, Anna Karina, Graziella Galvani
29 gen 2018