大林宣彦監督「花筐/HANAGATAMI」、映画とは何か。 |
東日本大震災から7年を迎えた今日。夜9時、朝から楽しみにしていた番組をみた。「最後の講義 映画作家・大林宣彦」、昨年12月に最新作「花筐/HANAGATAMI」を発表した大林監督が、早稲田大学で行った特別講義を編集したもの。
冒頭、変わらぬ笑顔に、思わずこちらも笑顔になる。私が初めてお目にかかったのは2016年、イタリア北東部にあるウディネという町で毎年開催されているファーイースト映画祭で、監督が生涯功労賞を受けられたときのことで、だからたった3年前のこと。だが監督は、この映画の製作に入った直後に肺がんが見つかり、余命3カ月と宣告されていたのだった。
闘病をつつみかくさず語る監督。自分の中に巣食う「がん」という本来は悪とされる生き物を、御し戦いともに生きるものとして受け入れる姿は、やはりクリエーターならではの強さなのだろうか。いや、葛藤の大きさは計り知れない。だが、今、伝えるべきものを伝えなければ死ねない、と宣言する。
そして、番組の中では出てこなかったのだが、3月8日(木)付の朝日新聞に掲載されたインタビューでは、この7年前の震災との関係を語っている。未曾有の大災害を前に、自分ができることは何か?それはやはり映画を通じて表現することだった。「ずっと意識的にノンポリで来たけれど、震災で「大矛盾だ」と素直になれた。だから戦争を映画で直接取り上げるようになった。戦争体験も伝え始めました」。
40年前にすでに脚本ができていたという「花筐」は、檀一雄の原作、どこにでもいるような、だがそれぞれ個性豊かな若い男女が、いやが応にも戦争に巻き込まれていく、その恐ろしさがストレートに描かれている。だがもちろん、ここは1977年に発表した際に「おもちゃ箱をひっくりかえしたよう」と批判されたという「HOUSE ハウス」でデビューした大林監督のこと、どっかーん!ばっこーん!ぷしゅー!がしゃーん!!!と派手で楽しく、シュールでシニカルな最高なエンターテイメントとなっている。
そして作品のストーリーとともにクライマックスを迎える唐津くんちの、何かおそろしいほどの美しさ。人の力と映像の美と、あい合わさって映画という1つの作品に昇華する。一見ミラクルのようにみえるが、それこそが監督の仕事。映画の面白さを楽しむ、変な言い方だがそんな映画だった。
第72回毎日映画コンクール日本映画大賞など、すでに数々の受賞をしている作品だが、もしまだ見ていない方は今からでも、ぜひ。
花筐/HANAGATAMI
監督 大林宣彦、168分、2017年
出演 窪塚俊介、矢作穂香、常盤貴子、満島真之介、長塚圭史、ほか
http://hanagatami-movie.jp
11 mar 2018