回想〜第15回建築ビエンナーレ〜15・金銀の獅子たち |
地球上の約半分の人々が貧困にあり、さらにその半分は悲惨な生活を強いられている。自分たちは少しでもその問題を解決するための追求者である。伝統的な素材と新しい技術を生かし、不可能と思われたことを可能にする。ここでは、レンガと高強度のセメントを使ってこの「建物」を6日間で完成させた。個人部門で金獅子賞を受賞した、Gabinete de Arquitectura のソラノ・ベニテス氏は、そう語っている。
ジャルディーニ会場、入ってすぐの広い空間を占めたこの作品の受賞は、夢のようなプロジェクトの設計図やモデルもいい、写真もいいけれど、まず「建築とは何か」とシンプルに問いかけ、建築家として1つの案を提案するということが、国際的な建築展の場として最もふさわしいと評価されたということだろう。
Gabinete de Arquitectura (Solano Benítez; Gloria Cabral; Solanito Benítez)
Breaking the Siege
個人部門で「若手作家」に与えられる銀獅子賞は、アルセナーレ会場の奥のほう、運河の上に浮いていた。受賞を聞いてあらためて、慌てて見学に行ったところ、手にしたばかりのはずの銀獅子が芝生の上に、みなさまどうぞご自由に触ってくださいとばかりにちょっと誇らしげに立っていた。
木材を組み立てたジャングルジムのような展示は、実際に中に入って登って見学する仕組み。受賞者は関係者や見学者と、ふつうに談笑中だった。
NLÉ (Kunlé Adeyemi)
Waterfront
そういえば、金獅子賞のすぐ隣、審査員特別表彰を受けたMaria Giuseppina Grasso Canizzo の作品も、それこそ設計図や写真を見せる展示だったものの、中に入って見学する仕組みだった。この年の審査員は、体感型展示がお好みだったらしい(笑)。
冗談はさておき、特別表彰に日本館と、イタリアのマリア・ジュゼッピーナ・グラッソ・カニッツォ氏が(かろうじて)入ったものの、国別の金はスペイン、特別表彰がペルー。個人ではパラグアイのソラノ・ベニテス氏にナイジェリア出身で現在はオランダを中心に活躍するクンル・アデイエミ氏、事前に発表されていた生涯功労賞はブラジルのパウロ・メンデス・ダ・ロカ(Paulo Mendes Da Rocha)氏、と国際色豊かな、とくにラテンパワーを強く感じさせられた回となった。
・・・と、いまさらながら自分の投稿を読み返してみたら、同じようなことを既に書いていた・・・。ただ、そのときは、「なんだ、ラテン贔屓だな」と思ってしまっていたのが、2年たってあらためてみてみると、それぞれしっかりとメッセージが込められていたことに気がついた。
前回のコメントをここで反省しつつ、自分の記録と記憶のために、写真とともにあらためて掲載しておきたい。
さてさて、今年はどんな対話が生まれてくるのだろう。
第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展
会期終了
15° Mostra Internazionale di Architettura
28 mag - 27 nov 2016
http://www.labiennale.org/it/architettura/2016
22 mag 2018