それでもヴェネツィアは美しい。~被害状況と支援について |
16日の日曜日。水位は再び、154cmを記録したものの、翌日以降かなり落ち着く見込みになったことと、お日さまが顔を出しきれいな夕焼けとなったこともあり、それまで水害の悲惨な画像や映像であふれていたSNS上に、ヴェネツィアの明るい写真が次々と投稿され始めた。「それでもやはり、ヴェネツィアは美しい」と。
先週12日深夜に発生した187cmと先週末までの数回にわたるアックアアルタによる被害で判明しているものは、「ラ・ヴォーチェ・ディ・ヴェネツィア(La voce di Venezia、ヴェネツィアの声)」というオンライン・サイトの記事に、個別に読んだものなど補足を加えて、19日現在、以下の通り。
離島
ヴェネツィアのラグーンで自然の堤防を形成するひとつ、ペッレストリーナ島は全島が完全に冠水。78歳の男性が感電により死亡したのはこの島だった。なお、この高潮による犠牲者は2名という数字が出回っているが、実際に亡くなったはこの1名のみらしい。その先、ラグーン南端のキオッジャ島も深刻な被害を受けた。
ほかにも多くの島が冠水、特に県や国際大学の施設などのあるサン・セルヴォロ島、本島南岸の向かいジュデッカ島で大きな被害が確認された。サン・セルヴォロ島では水上バスの停留所が全て破壊されたため一時的にボートの発着が不可能となったほか、護岸が激しい暴風と水位により30メートルにわたり崩壊。植栽にも大きな影響が出たほか、停電も発生した。
墓地の島サン・ミケーレ島やブラーノ島でも倒木があったほか、トルチェッロ島、ムラーノ島でも浸水被害は深刻で、それぞれ、サンタ・マリア・アッスンタ聖堂やサンティ・マリア・エ・ドナーと教会も安全確認を行う必要がある。
本島
いくつかの護岸が崩壊。”La Voce di Venezia”から拝借した写真はビエンナーレのジャルディーニ会場近く。本島最東部のサンテレナでは、倒木が目立つほか、このエリアに停泊されていた水上バス船が沈没、市内の水上バス会社ACTVは、全部で5艘のボートが沈没などで使用不可となった。それ以外の場所でも、多くのボートやゴンドラが、岸に打ち上げられるなどの被害が出た。暴風による屋根やアンテナの被害、また一部通行止めも発生した。
一方、救急病院も浸水したが、機能上の大きな影響は出なかった。医師や看護師などの通勤困難等の影響により、救急・緊急の患者のみに限ったものの、水害中およびその後も通常通り診療を行った。
特殊といえば特殊なのが、パッサレッレ(passarelle)。通常のアックアアルタの際、歩行のために設置されるいわゆる渡し板だが、1x2m ほどの板と、2段階の長さがある脚とは固定されておらず、必要な時に、上に乗っけて使う。水位予報が80cmを越えると用意され、120cmを越えると再び片付けてまとめて積まれているのだが、今回の暴風アックアアルタでは、2500脚、1100枚の板のうちおよそ30%が水と風に流されて消えた。
そのほかの教会も、全120のうち半分以上で何らかの被害が出ているとされる。
美術館・博物館も、離島含め1階部分はいずれも浸水、歴史的建造物に大きなダメージを与えたほか、電気系統や下水等に不具合が生じた。17日(日)までは高潮が続いたので館により開いたり開かなかったりだったが、今週からほとんどの美術館が通常通り開館、ただし、ゴルドー二の家博物館は来週から。フォルチュニ館美術館は現在の企画展が11月24日までの予定だったが、館内設備に問題が生じたため、残念ながら前倒しで閉幕となった。
カ・ペーザロ美術館は、アックアアルタの夜に火事が発生し、天井の一部が崩落、今のところ再開が未定。最上階に曲がりする国立東洋美術館もそれに準じて閉館中。カ・ドーロ美術館、グリマーニ館も再開未定。ヴェネツィア大学の学生らが清掃などの手伝いを行っている。→24日まで「DYSFUNCTIONAL:」展開催中のカ・ドーロ美術館は、11月20日(火)より通常の時間帯で開館と発表された。
いずれも、所蔵作品等の損傷は出ていないのは不幸中の幸いといえよう。
市立美術館群(パラッツォ・ドゥカーレ、カ・ペーザロ、ムラーノ・ガラス、ブラーノ・レースなど)への義援金は、以下で受け付けている。
IBAN IT24T0306902117100000018767
BIC: BCITITMM
名義 : Comune di Venezia
名目: “Contributo emergenza acqua / Musei Civici”
(市全体の義援金口座と同じなので、美術館群に特定したい場合は、必ずMusei Civici と明記を。)
今週が最終週となるビエンナーレは、14日より通常通り再開している。ただしジャルディーニ、アルセナーレのメイン会場は開いているが、街中の展示は臨時閉館しているところも多いので、随時、サイトで確認のこと。
1番上と1番下の写真は、ansa.it より拝借しました。
(②に続きます)
19 nov 2019