ガラスの仕事〜「インピラレッサ」 |
以前、いろいろなタイプのガラスを使ったネックレスの1日ミニ展覧会を紹介したが、主催したマリーザ・コンヴェントさんはふだん、そのお店兼工房でオリジナルのアクセサリーを作っている。
1点もののビーズ(ガラス玉)を使ったアクセサリーも作っているが、ガラスのビーズ自体はマリーザさん作ではなく、彼女の元々の専門は、細かいビーズの組み立て。
いわゆる「ビーズ」、ヴェネツィア語でコンテリーエ(conterie)と呼ばれる、ミリ単位、いや、1ミリ以下のものもざらに存在する、色とりどりでまん中に穴のあいた細かいガラスの粒は、極細の針金や糸に通して、アクセサリーや装飾品、織物などに使われる。ヴェネツィアではかつて、女性達が家庭内でこれを使った造花などを作っていたほか、照明器具などのインテリアにも使われ、一時は一大産業として、ムラーノ島にコンテリーエ専門の工房がいくつも存在し、大量に生産していた。
そのころ、たくさんの女性たちが、ビーズを糸に通す仕事をしていたが、彼女たちのことを「インピラレッサ(impiraressa, 複数形でimpiraresse)」と呼んでいた。
コンテリーエをたくさん入れた、「セッソラ(sessola)」という薄いトレイに、針金を何本か、扇形にして片手に持ち、もう片手でさささっとコンテリーエをその上に寄せるような動作をする。すると、あらあら不思議、これで一度にたくさんのコンテリーエが針金に入っていく。そのお尻には糸がついていて、こうして、同じ色のコンテリーエの入った糸をどんどん作っていく、というもの。職人というよりは内職仕事だが、これも熟練した人だと針金を一度に20本近く扱うらしい。
コンテリーエ最盛期には、トレイを膝に載せてこの作業をする女性たちが、あちこちで見られたという。
「私はインピラレッサなのよ」と言うマリーザさんは実は、若いころからこの仕事をしていたわけではない。ほかの仕事をしつつ、ずっとコンテリーエにひかれ続けていたのだが、その情熱が嵩じてなんと45歳でこの世界に飛び込んだ。90年代末にムラーノである工房が閉鎖すると聞き、いてもたってもいられず、何キロものコンテリエを購入。その後、義母とともにほぼ独自で「インピラレッサ」の技を学んだそう。
このお店兼工房を開いたのは、2006年。「インピラレッサ」の技に加え、今は独自のセンスを生かしてオリジナルのアクセサリーを作っている。
マリーザさんのシンボル的定番商品「さんご」のシリーズは、色合いもサイズもいろいろ。イタリアでも幸運を呼ぶとされる「赤さんご」が人気だが、シルバーなどシックな色合いのもすてき。
Venetian Dreams
Calle della Mandola 3805/A
tel. 041 5230 292
2 feb 2015