第56回ビエンナーレ・7〜街中編3、アイスランドは閉鎖中 |
毎回、90近い国別のパビリオンと、それ以外に公認、それ以外、あらゆる展覧会がぎっしりとひしめきあうヴェネツィア・ビエンナーレ。とくに「街中」に散らばる展示は、ただでさえ迷宮なヴェネツィアで、あえてなのか毎回とても曖昧でわかりづらい地図のおかげで、探しても探してもどうしても辿り着けずに終わってしまうところもある。(方向音痴なせいもあるけれど)
アイスランド館は、ご多分に漏れず、ビエンナーレの公式マップの中に記された住所(番地)と、地図の中の位置が微妙に違っていた。それでもまあ、近くまでいけば、それとわかる看板で見つかることも多い。ところが今回のアイスランド、そのあたりに行っても、それらしき看板も表示も、何もない。
番地からするとこのあたりのはず、なのは教会。いや、教会の中を使った展示も、ビエンナーレでは珍しくないから、一応覗いてみようと思ったら、そこはモスクになっていた。
・・・
不思議な気持ちがした。
長い歴史の中で、とくに現イスタンブールをはじめとする旧ビザンツ帝国では、元々のキリスト教会がオスマントルコの支配下でモスクに改装されたところがいくつもあり、それは今でも残っている。アヤ・ソフィアはその1つだが、もはや博物館化しているという意味では特殊な例。ほかに、教会として建てられ、今はモスクとして使われている建物がいくつも現存する。
だから、それ自体に違和感はあまりなく、むしろイスタンブールで見た、そんなモスクを思い出した。
頭によぎったのは、ああ、とうとうヴェネツィアの本島内にも、モスクができたのか、ということ。世界中から観光客の集まるヴェネツィア、もちろんイスラム系の観光客も多いが、おそらく想像される以上に、イスラム系の住民もものすごくたくさんいる。ヴェネツィア市でも、すでに陸地側には何年か前にモスクができているし、本島内でも希望があるだろうことは想像がつく。
そうこうしているうちに、どんどん信者の方々が集まってきたので、失礼になるといけないと思い、早々に退出して帰ってきた。
・・・そして、そのモスクこそが、今年の「アイスランド館」、つまりアイスランドの作品であることが後でわかった。
実際に人が動いたり踊ったり、あるいは演技したり、という「ライブ」を含む作品も、今回のビエンナーレ全体でもあちこちで見られた。では、このアイスランド館=イモスクという「展示」は、パフォーマンス・アートの一種なのかというと、どうやらそうではないらしい。
ほんとうに本物のイスラムのコミュニティごと巻き込み、礼拝も通常通りに行うという。
何がアートで、何がそうでないのか、線引きは難しい。だが、これはいったい、どう考えたらいいのか・・・。
案の定、開幕早々に問題が発生した。ローカル紙などによると、この場所の使用について、ヴェネツィア市にはあくまでも「美術展」としての届け出しか出ておらず、宗教施設としての申請は一切なかったこと、そもそも宗教施設としての利用は認められないこと、等々。主催者、つまりアイスランド館としてのキュレター、Christoph Büchel氏には、必要書類などの追加説明を求めており、それがない場合、閉館の危険もある、と。
本物の「モスク」にすっかり騙されてから1カ月。改めて足を運んでみたところ、扉が固く閉ざされ、その通告を示す張り紙だけが表に張り出されていた。
昨日紹介した映画「ピザとなつめやし」は、ヴェネツィアの中にモスクがあった、という設定なのだから、現実よりも1、2歩先を行っていると言える。ちなみに、映画の中で実際にモスクにしてしまうのは、この教会のすぐ近くにある、スクオラ・グランデ・ディ・ミゼリコルディア(Scuola Grande di Santa Mar adella Misericordia)。こちらはもともと、スクオラというヴェネツィア独特の組織、同信会のオフィス兼集会所として建てられたもの。「慈悲の聖母」と教会と同じ名前がついているが、宗教組織ではないのが特徴。この建物は長らく、なんと体育館などとして使われていたあと、ここ数年は、ビエンナーレなどの企画展会場として利用されている。
ISLANDA
The Mosque
Project by Christoph Büchel in collaboration with the Muslim community of Iceland and Muslim
community of Venice, Italy
Commissario: Björg Stefánsdóttir. Curatore: Nína Magnúsdóttir. Sede: Santa Maria della Misericordia, Campo de l'Abazia Cannaregio 3548/49
6 giu 2015
先日、話題になった、アイスランドのごく一部で残っていたバスク人がアイスランドに行ってはいけない法律が破棄されたニュース、ご存知ですか?
www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/iceland/11635123/Iceland-abolishes-law-which-orders-Basques-to-be-killed-on-sight.html
アイスランドは、西欧、北欧とはまた違う感覚があるのかなと、このビエンナーレのポストで思いました。
> バスク人がアイルランド人に行ってはいけない法律が破棄されたニュース
は全然知りませんでした。そんな法律があったことも、破棄されたことも。イタリアではあまり聞かなかったように思います。
アイスランドは少なくとも、ヨーロッパではないのかもしれません。フィンランドもずいぶんと違うようですが・・・。