「美しのガラス・・・」展、江波冨士子「美味な」ガラスたち |
今回の展覧会、イタリア語のタイトルは、
Delizie di vetro. Le opere di Enami e Konishi tradizione e creatività.
という。
まだまだ企画段階のさなか、何か目を引くタイトルは・・・と考えていたときに、当時の同美術館館長スパダヴェッキア氏が提案してくださったのが、このdelizieという単語だった 。delizie(単数形はdelizia)は、見た目にも気が利いておいしいもの、それもほんのすこし、控えめながら贅沢だったり豪華だったりという意味合いを含む。delizioso という形容詞になるともっと広範囲に、優美な、賛美されるというような一般的な使い方も増えるが、名詞の場合は基本的に食べ物を指すことが多いように思う。例えていうならば、一流のパティシェによるプチフールとか、チョコレート・トリュフとか。お酒なら、フルーティで繊細なリキュール、か。ちょっとしたキラキラ感を含むのが特徴で、真の辛党の人には、どう説明したらいいのかわからない。
食を意識したタイトルをあえて選んだのは、まず、ポスターなどヴィジュアル・イメージにも使われている江波さんのこの作品群。大きく扱ったために、ガラスの置物を連想された方も多いかもしれないが、だとしたらそれはこちらの作戦大成功。
1つ1つは実は、縦横数センチ、一番長いもので10cmあるかどうかというミニチュア・サイズで、というのもこちらは実はみな、置物ではなくて、お茶道具の中の「振り出し」、全20種。主に野点の際に、金平糖などのお菓子を入れた容器で、もともとはひょうたん型や卵型のものが多いらしい。
そして、この「振り出し」をメイン・イメージに使うことと、そのタイトルにすることに決めたのは、現在ミラノで開催されている万博のテーマがずばり「食」であったため。国立の美術館で開催する以上、イタリア文化省公認のイベントとなることは自明であり、当然のことながら国を挙げての行事である万博を意識しないわけにはいかなかった。残念ながら、同展は11月末までと、10月末に閉幕する万博より期間が出てしまうため、万博公認行事とはいかなかったが、期間内であればその可能性も十分にあっただろう。ちなみに、オープニング時に開催したお茶会は、万博日本館の公認行事として認定いただいた上、同お茶会と江波氏のレクチャーは、やはり文化省あげてのプロモーション、「欧州文化遺産の日」の公認イベントともなった。
日程については、企画の段階では、ヴェネツィア・ビエンナーレの期間中に、というのを意識していたので、結局どちらもかぶる時期に落ち着いたのはよかったと思う。
話を元に戻すと、ほかの作品も、お茶道具や酒器類、提げ重にたばこ盆と、嗜好を扱うものが多かったこともあって、delizie di vetro(ガラスの味わい)は、まさにピッタリのタイトルとなった。
そんな「振り出し」たちは今回、大胆にも入り口のタイトル脇にまとめて展示。
思っていたより小さな、だが期待以上に繊細で精密なガラスに、まずは目を奪われることは間違いない。ガラスなのに、着物の端切れで作ったような質感が江波作品の特徴。ぷっくりとツヤのある果物や野菜たち、まずはじっくり味わっていただきたい。和の伝統的な食材も多いから、これはなんだろう?というものある。
出入り口の踊り場にあたるスペースだから、帰りにまた出会うことになる。鎧兜や長刀に見下ろされているのはご愛嬌。
美しのガラス 江波冨士子・小西潮作品 伝統と創造
ヴェネツィア、国立東洋美術館
(カ・ペーザロ内)
11月29日まで
Delizie di vetro. Le opere di Enami e Konishi tradizione e creatività
Museo d’Arte Orientale di Venezia
Ca’ Pesaro S. Croce 2076
19 set - 29 nov 2015
16 ottobre 2015
おお、栗も登場するかも、なのですね、追加続々、楽しみにしております。