マエストロのガラス、バラリン工房にて |
ムラーノを代表するガラス工房の1つ、バラリン(Vetreria artistica Ballarin)で、彼らの「顔」でもあるレース・ガラスの貴婦人作りを見学させていただいた。
島全体で、ガラス作りの分業が行われているムラーノ島では、その材料となる色ガラスや模様の入ったガラス棒など、その専門の工房が用意したものを使うところもあるが、こちらバラリンは、一から自前が原則。前日までにその材料を用意し、いざ、人形へ!
顔から胴体にかけては、釜の中でどろどろに溶かしてある透明なガラスを、少しづつ足しては、形を整えていく。途中で金箔もさらっと巻き、伸ばしたりカットしたりで、中のキラキラを作る。
同時に、スカート部分のガラスを準備。ルビーノ(rubino)と呼ばれる美しい赤ガラスと、レースガラスを交互に並べて釜へ。全体が溶解したところでくるくるっと筒状に巻き取って、表面を整え、ふくらまし、ふわっとドレスらしく形を作っていく。温度が下がるとガラスが固まって作業ができなくなるので、この間に何度も、釜に入れては出し、少しずつ少しずつ進めていく。
マエストロ、ジュリアーノさんの腕さばき、いとも簡単そうにガラスが形になっていく姿にはただただ感嘆するのみなのだが、その仕事になくてはならないのが、チームワーク。息子さんのロベルトさん、助手のイヴァーノさんが、マエストロの進行状況を見計らって、あらかじめ次に必要となるものを用意し、いざというときにさっと差し出す。それがほとんど無言、またはほんの一言、二言のみで進んでいく様子に、見ているだけのこちらもピリっと緊張する。
・・・そして、最後の最後の仕上げをするマエストロ、なんだかちょっと、娘に嫁入り仕度をさせる頑固父さんのような表情・・・。いや、マエストロの十八番だというこの人形、これまでいったい何人の娘を見送っていったのだろう?
この日は、やはり別の老舗の工房の関係者という12歳の少年が見学にきていた。そちらは現在残念ながら閉じてしまっているらしいが、熱心な観察ぶりに、将来のマエストロへの期待抜群。ちょっとやってみるか?と言われて吹いてみたガラスがきれいに膨らんで、おおっさすが!ジュリアーノさんがこの仕事を始めたのがちょうど12歳のときだそう。もっとも現代では今すぐ学校も放り出して弟子入り、というわけにはいかないけれど、このときの思いを忘れずに、そして少しずつでも学んでいってくれたらいいな、と思う。
ほかに、ショールームの写真をいくつか・・・。こちらは原則、オーダーベース。
それにしても、あんないかにもガテンな現場から、こんなに繊細で優しく、エレガントなガラスが次々と生み出されてくるのはなんだか不思議なくらい。
工房、ショールーム見学は要・ご相談。
人形など、バラリン工房のいくつかの作品は、こちらで購入可能。
Rossi Anna
Fondamenta Vetrai, 72 Murano Venezia
tel. 041 736 945
http://fumieve2.exblog.jp/25766119/
28 gen 2016