第73回 ヴェネツィア映画祭・10〜ああ、アメリカ・・・ |
ああ、また・・・。
西部劇の伝統なのか、アメリカの映画ってどうしてこう、砂漠が好きなんだろう・・・。
ニューヨークかロサンゼルスの大都会か、もしくは砂漠。(またはSF。)アメリカの映画を積極的に見ている方ではないので、たまたまとくにこの映画祭がそうなのかどうかわからない。アメリカ以外でもオーストラリアや、あとは今年のチリ作品もあったし、砂漠の冒険ものというのは映画人の創造性を刺激するのだろうか?
ショートパンツにタンクトップ、飾り程度の小さなリュックをしょった、さっきまでビーチでアルバイトしてたのかも?という出で立ちの若い女の子が1人現れたかと思うと、「危険!ここから先は何が起きても米国政府は責任を取りません」と書かれた看板を越え、砂漠に踏み出していくのを見ると、え〜って思ってしまう。
(注、写真上は、監督のアナ・リリー・アミルプール氏)
はい、わかってます。しょせん映画だから。ツクリものですから。それでも、いろいろ細かい矛盾が(例えば、暑そうだなーこんなとこ歩いてたらあっという間に干からびちゃう、と思っていると、最初は持っていなかったはずの水のタンクから水を飲んだりする。いや、絶対それ、最初のリュックに入ってなかったでしょ?みたいな)気になる。さらに、なぜ彼女が砂漠を1人歩いているのか、そのモチベーションがわからない。そして、案の定危険にさらされても「いや、だから・・・」と。
そう、好みの問題。だから個人的にはやはり、好みではない。
The Bad Batch
監督 Ana Lily Amirpour - 米、119’
出演 Suki Waterhouse, Jason Momoa, Keanu Reeves, Jim Carrey, Giovanni Ribisi
そしてこれも「・・・また?」
米国にとって、現役大統領ケネディの射殺というのは、よほど大きな事件で、かつこうして何度も映画や小説に取り上げたくなるエピソードなのだろう。日本でいうと、本能寺の変とか、そういう感じだろうか?
一般に公開される映画よりは幅広く、多様な映画が出品されているはずのヴェネツィア映画祭だが、(「砂漠ものと同様」)ケネディものを何度も見ている気がする。
いや、では日本はどうなの、イタリアは、ヨーロッパは?と聞かれれば、それはそれで確かに、それぞれ似たような同じテーマで同じような映画を作っているのかもしれない。きっと、ジュリオ・チェーザレ(ユリウス・シーザー、カエサル)をテーマにした映画だっていっぱいあるだろうし。なのだけど、正直のところ、特別に新しい視点でも技術でもないように思え、ちょっと退屈。ジャッキーを演じるナタリー・ポートマンはきれいだけど、「ブラック・スワン」のときのほうが衝撃が強かった。
Jackie
監督 Pablo Larraín - 米、チリ、100’
出演 Natalie Portman, Peter Sarsgaard, Greta Gerwig, John Hurt
そして、テレンス・マリック監督の 地球の誕生から現在までを描いたドキュメンタリー映画。
うーん、対象に応じてさまざまな技術を駆使して、3年かけて撮ったという映像は確かに美しく、目を見張る。人間が苦労して作り出すどんなファンタジーも、自然の神秘にはかなわないとも。
これはこれで、こういう映画があってもいい。ただやはり、科学教育映像の延長というイメージが否めない。
今回コンペに入っているもう1本のドキュメンタリー作品、京都大学准教授久保田氏が「出演」されている”Spira mirabilis”はかなり不思議な作品だったが、こちらはある意味、王道的ドキュメンタリー。そういえばクラゲも登場するが、映像美という点ではこちらに軍配が上がる。だが、映画祭らしい映画、というと前者のように思う。・・・どうだろう?
Voyage of Time: Life’s Journey
監督 Terrence Malick - 米、独、90’
(documentario)
Cate Blanchett
73. Mostra Internazionale d'Arte Cinematografica
31 ago - 10 set 2016
http://www.labiennale.org/it/cinema/73-mostra
7 set 2016