ギリシャとローマと。古代劇場を見る |

あっまさに!と思った。
先日、新作能「天正少年使節」鑑賞のため訪れたヴィチェンツァのテアトロ・オリンピコは、同地出身でルネサンス時代の建築家アンドレア・パッラーディオが古代建築を研究し、ローマ劇場にならって設計したものだが、その原型がまさに、ここにあった。

ローマ郊外、フィウミチーノ国際空港に近いオスティア・アンティーカの遺跡地区は、19世紀から本格的な発掘調査が始まったというから、パッラーディオが実際にこれを見たかどうかはわからない。ただ、各地に同じ「街」を作ったローマ人のこと、劇場の構造や大きさも、だいたい同じものを踏襲していたのだろう。
客席の半円の角度、高さ、大きさが、実感としてほぼ同じくらい。そして舞台背景として「建築物」ここではそのほんの痕跡だけだが、それでもかつてここに、立派な背景があったことは容易に想像できる。

そして古代の劇場といえば、この2月にシチリア、シラクーサでギリシャ劇場を見ているのだが、ギリシャとローマの劇場は似て非なるもの。
あくまでも神事としての演劇の舞台であったギリシャ劇場は、街の郊外、たいていは神殿の近くの丘の上に建てられたが、ローマでは演劇もエンタメの1つ。街の中に建てられた。
とくに建築的観点からみて根本的な違いは、あんなに立派な神殿を建てていたギリシャ人だが、「アーチ」の技術を持たなかった。そのため、半円から立ち上がる観客席を作るには、実際には土地の自然な傾斜を利用するしかなかったのだが、エトルリア人からアーチの技術を学んでいたローマ人は、平地に独立した建築物としての劇場を作った。

・・・こういうの、ヴェネツィア大学で真面目に美術史を勉強していたときに、確かに一度(ならず何度も)学んでいるはずなのだが、紙や写真で見るだけではさっぱり頭に入らず。こうして実際自分の足で踏みしめてみてはじめて、目からウロコが落ちた。

ちなみに、イタリア国内でよく知られているギリシャ劇場は、シラクーサのほか、同じシチリアのタオルミーナなど。
ローマ劇場は、さっと思い出す限りでヴェローナ、トリエステなど。コロッセオやヴェローナのアレーナは劇場でなく、また半円でなく円形の闘技場だが、構造としてはあれに似ていて、ともかく座席になっている石段の1段1段が大きく、従って傾斜がかなり急になっている印象がある。
シラクーサのギリシャ劇場は、丘を利用しているため、確かにその石段がもっと緩やかだったように思う。

あとは、舞台にあたる部分が、ローマ劇場では平土間より高くなっていて、つまり現在の劇場により近いのだが、ギリシャではここの段差がなかったとか。ここはちょっと未確認なので、ご存知の方がいらしたらぜひ教えてください。また、半円のところは、実際は平土間というよりオーケストラボックスで、座席は全て石段だったよう。
2000年以上も前に、あんなものを建てていたギリシャ人もすごいなーと思ったけど、その500年後くらいにこれを建てたローマ人もやっぱりすごい。

オスティア・アンティーカ遺跡
Scavi di Ostia Antica
http://www.ostiaantica.beniculturali.it
8 ott 2016


