マンショを訪ねて、「遥かなるルネサンス」展 |

ようやく、会えた。
つい3年前に発見された「伊東マンショの肖像」は、昨年、東京、宮崎で公開されたあと、神戸、青森を回っていたのだがなかなかタイミングが合わず、この八王子で今回ようやくお目にかかることができた。
美しい肖像画だ。これはほんとうに、写真や画像では全くわからないけれど、とても丁寧な絵といえる。
昨年のヴェネツィア大学のマリネッリ教授の講演にあったように、ドメニコ・ティントレットの肖像画は、正直のところいずれも凡庸で、力を抜いているというか、大量な注文を機械的にこなしていたようなところがあるのだが、それと全然違う。いやむしろ、これがドメニコとはにわかには信じがたい。
顔と帽子、スペイン風の大きな襟までは緻密で写実的な筆致で、首から下のベルベットらしき上衣は、ざっざっと一筆で大胆に描かれていて、それがまたうまいのだが、その対比が父、ヤコポ・ティントレットの肖像画を思わせる。いや、たぶん父による肖像画では、こんな大きな襟はあまり覚えがないけれど、教授の解説では、下描きにはもともともっと小さい襟が描かれていたというからそれならなお完璧だ。
主にウフィツィ美術館の協力のもと、天正少年使節団のイタリアでの軌跡をたどり、当時の資料や、当時彼らが目にしたはずのものなどを紹介する展覧会。上記「伊東マンショ」とペアをなすように展覧会の「顔」を務めるのは、フィレンツェの画家ブロンズィーノによる「ピア・デ・メディチの肖像」なのだが、これは、「少年」に対し「少女」の肖像ということで選ばれたのだろうか?ただし、マンショのほうはすでに口ひげをうっすらと生やした「青年」の姿で描かれているのだろうか。それならばむしろ、ブロンズィーノと、ティントレットと、フィレンツェとヴェネツィアの当時の肖像画の違いなどにもう少し迫ってみてもいいのではと思うのだが。(もしかすると音声ガイドにはあるのかもしれない)
うれしいサプライズだったのは、フェデリコ・ズッカリによる素描。着物姿の男性を描いたもので、後ろ姿と、正面と、1枚の紙の両面に描かれているため、展示は残念ながら背面だけなのだが(両面を見せるケースに入れてくれればよかったのに・・・!)、なにしろ、当時彼らの来欧は、誰もが初めて見る日本人ということで大ニュースであり、たくさんの資料が残されているのにもかかわらず、実は着物姿のものはほとんどない。
(詳細は、長くなりますが、ぜひこちらを・・・ 卒論物語 http://fumiemve.exblog.jp/i14/ )
ルーブル美術館所蔵というこの素描については、うかつにも知らなかった。ほんとうに簡単なスケッチながら、後ろ姿についてはかなり正確だし、実際着物といっても何を着ていたのか、ほかの資料ではわからなかったのだが、これを見ると、裃を身につけていたことがはっきりわかる。正面はおそらく、遠目に見ただけなのかもしれない、やや怪しいところもあるが、色と模様の配分など、興味深い。
ちなみにこの画像、公式サイトなどにも載っておらず、ショップで販売していたクリアファイルからスキャンしたのでバーコードが透けて見えているのはお見逃しを(笑)!正面のほうは同じく購入した絵葉書から。

少年使節団のイメージ資料のうち、18世紀にヴェネツィアで描かれた、グレーヴェンブログの書(http://fumiemve.exblog.jp/7705289/)なども展示されており、なつかしく嬉しく見学した。
遥かなるルネサンス 天正遣欧少年使節がたどったイタリア
東京富士美術館
2017年9月21日~12月3日
http://www.fujibi.or.jp/harukanaru/
15 nov 2017
こちらの展示、青森県立美術館で開催された時に見ました。
430年前に生死をかけて渡ったヨーロッパ。
彼らが見たイタリアは、今とほとんど変わらない光景だった
でしょうね。私は初めてイタリアへ行った若造の頃は、こんな美しい都市が
数百年も変わらず残されていることに感動、ぶっ飛びました。
それ以来イタリアのファンです。
かれらがイタリのどこを訪れ興味がわいてきて これからこちらの「卒論」を拝見したいとおもいます
私も鎌倉在住です
おおっ!地元で見られたのですね。日本では展覧会が東京にばかり集中していますが、こうした(地味目)の展覧会が少しでも多くの人にみていただけるのは嬉しいことです。
上記記事内には書ききれませんでしたが、彼らが訪欧した当時の絵画なども展示されており、とくにヴェネツィアのサンマルコ広場の様子は、ほんとに今とほとんど変わりませんよね。