向かい合う?不思議な動物たち~ミラノ編 |
ミラノの守護聖人サンタンブロージョを祀る大聖堂は、紀元後5世紀、イタリア半島でキリスト教が公認になってからまだそう遠くない時代の貴重なモザイクが残されており、モザイク・マニアとしては見逃せない。が、ふらりとこの教会にやってきて、まず目に入るのは、三角屋根に大きくアーチの開いたファサードと、その前にくっついた回廊だろう。
本堂の前に大きな回廊があるのは、キリスト教が普及しはじめた最初の頃、信者でないと本堂には入れなかったため。今でこそ、こうして観光客だろうが研究者だろうがモザイク・マニアだろうが、カトリック教会は自由に誰でも出入りができるが、当時は、洗礼を受け、信者にならない限り中に入ることができなかった。洗礼を受ける前に教会に通っていた人々が集う場所として、前庭としての空間が設けられているのが一般的だった。
回廊付きのファサード、レンガ造りに白大理石でアクセントをつけたシンプルな姿は、その聖堂の大きさを感じさせないほどさりげなく、それでいて、とても印象的でもある。そして一見シンプルに見せかけていながら、近づいてよくよく見ると、たとえばそれぞれの柱頭には、さまざまな動物や登場人物がうごめいている。建物全体と同様、11世紀末から12世紀にかけて作られたもので、ほかのロマネスク教会同様、それは個性に満ち溢れている。
寓話的なもの、羊飼いと羊たち、あるいは様式化した蔓草模様。
・・・で、待てよ、ここの動物たちは、そういえば皆、お互い向かい合わずに、お尻を向けている!・・・なぜ???どうして???いつのまに???
・・・よくよく見ると、柱頭には4つ角があるから、平面の部分ではお尻を向けているようでも、角で顔をつきあわせていたり、もっとすごいのは、角に頭は1つなのに、体がその両側に開いていたりする・・・。
かと思うと、入り口脇の付け柱に、かなり生々しい牛さん(?)がしがみついていたり。しかもよく見ると、顔の向きが180度逆・・・ロマネスク聖堂は自由度というのかシュール度が高くて、ついていくのがなかなか大変だ。
堂内は通常はちょっと暗いのと、かなり高い位置にあるので観察が難しいが、やはりいろいろと凝った柱頭が並んでいる。
ミラノではゴシック華やかなりしドゥオーモもいいけれど、そこから地下鉄で数駅、落ち着いたエリアでのんびり、ロマネスクをじっくり味わうのもいい。
20 mag 2018