好きな道の厳しさと信じることの難しさと~「ブルーピリオド」2020年マンガ大賞!!! |
「・・・絵もやり方とか勉強することがあってね。
手放しに才能って言われると何もやってないって言われてるみたいで」
一枚の絵が、金髪ピアス男子の人生を変える。
飲酒喫煙あたり前、校内でも「不良」と呼ばれる仲間とつるんで朝帰り、それでも学年4位と勉強もソツなくこなす。選択美術は、なかでも一番「かったり~」授業のはずだった・・・のに、その美術室に置かれた絵に心を奪われる。
何もかも、ゲームをクリアする感覚でこなしてきた今どき(という言葉がすでに古いが・・・)の矢口八虎(やぐち やとら)は、文字通り突然、美術に目覚める。そろそろ進路を考えてなくてはならない高校2年生は、こともあろうに東京藝術大学をめざすことに決める。
不良ともだち、女装男子にちょっとオタクな美術部員たち。高校生たち一人一人個性豊かで、誰も完璧じゃない。そう、強いていえば、なんでも「カンペキ」だったはずの八虎自身が、迷い、悩み、苦しみ、もがき、自分と戦う。
日本の受験は厳しい。なかでも、美術大学の受験という特殊な世界を、ズブで素人だった八虎くんとともに読者の私たちも知らされることになる。絵がうまいのは大前提、問題を受け身でこなすだけでは合格しないどころか、そもそも、スタート地点に立てない。美術を学ぶために、専門の大学に入るために彼らは凄まじい努力を続ける。
自らも藝大を受験し、卒業した山口つばささんならではのリアリティはもちろんだが、それに加えてここに出てくる全ての人が魅力的だ。同世代の友人や仲間たちだけではない。八虎の変身と成長には、指導者の存在が欠かせない。学校で、予備校でこの先生たちに出会っていなければ、この道はなかったであろう。また、両親の心配も痛いほどわかる。そっと見守ることはいかに難しいことだろう。
好きだから頑張れる?自分に自信がある?そんな人ばかりでない、そんな時ばかりではない。それでも、まずやってみること、続けること、トライ&エラーを繰り返すこと・・・。それは決して青春時代だけではない、大人になってからだってできることはたくさんある。
「結果を求めた人に 結果が全てじゃないなんていうつもりはない
だけどこの数ヵ月君たちは自分の弱さと強さに向き合った
それは結果でなく必ず君たちの財産になる」。
今年のマンガ大賞受賞!のニュースを聞いて、この連休を幸いに1巻から6巻まで一気に再読した。連休明けの第7巻がますます待ち遠しい!!!
受賞のニュースはこちら
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200316/k10012334031000.html
ブルーピリオド 1~6巻
山口つばさ
講談社 アフタヌーンKC
https://afternoon.kodansha.co.jp/c/blueperiod/
受賞記念で、ただいまオンラインで1巻無料公開中!
21 mar 2020