アッシジにて・・・『聖者のかけら』、川添愛・著 |
言語学者、舞台は中世の修道院・・・とくれば、そう、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を思わずにはいられない。上下巻ではないものの、今どきにしてはそっけない装丁の中にページがぎっしりと詰まっていてずしりと厚い。
書評か何かで見て気になって、そのまま積読になっていた本、読み始めてみると、現代の言葉で書かれているせいか、『薔薇』ほどのイバラもなくさーっと読めて、夏休みののんびり読書にちょうどピッタリだった。
尊き人が奇跡を起こす。それはキリスト教に限らず、他の宗教にもあることなのだろうけれど、その遺体を、その一部でさえも所望して崇め、その「聖遺物」がしばしば奇跡を起こすのは、救世主キリストが死後3日で蘇ったとするキリスト教ならではの独特の信条と言えるだろう。奇跡はまた、聖人の遺体のみならず、聖人が生前に触れたものや、遺体が触れたものも起こすことがある。ありえない?・・・ほんとうに???あるいは、でっち上げ???
信じるか、信じないか。何を信じるか、で、この本の楽しみ方は変わってくるだろう。なんでも、ネットで検索すればすぐにわかる、そんな現代とは情報の伝達も分量も異なる時代、だが現代に比べてこの時代はほんとうに、全てが暗黒の闇だったのだろうか?
人里離れた修道院から、舞台はアッシジへ。たまたま、先日アッシジに行ってきたばかりで、当然、700年も前の物語の中のアッシジは今とは違っているとはいえ、だいたいの町の作りや、古い教会の位置は変わらない。物語の中ではちょうど建設中だという設定の聖フランチェスコ大聖堂も、先日も中の一部で修復工事を行なっていたりして、イメージがそのままシンクロした。
聖者のかけら
川添愛
新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/352891/
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11 set 2021